フサイチコンコルド列伝・編集後記
某擬人化ソシャゲで96年世代に光が当たりそうだとなった際、
「そういえば、96年世代って列伝的に手薄だよね」
と気づき、
「たった5戦だから軽ーく書けるんじゃないか?」
というすけべ心で書き始めた「フサイチコンコルド列伝」でしたが、気がつくと約32000字の大作になっていました。直近のナリタホマレ列伝は69戦+関連地方競馬の近況まで合わせて約23000字だったのですが。短編小説と中編小説の境界が4万字=400字詰め原稿用紙100枚程度だそうですが、400字詰め原稿用紙換算だと改行や台詞の行のブランクもあるので、中編小説(?)に足の指1本くらいは突っ込んでいるかもしれません。
20世紀末期と比較して、PCをいじるだけで触れることができる情報が爆増しているだけに、有名馬のエピソードを拾いながら取捨選択することが、本当に難しくなりました。そんな時代の中で、レイテ沖で米軍が展開するオーバーキルの空母大艦隊を、艦載機もパイロットもスカスカとなった空母艦隊を囮としておびき出し、旧式戦艦を主力部隊としてレイテ湾に突っ込んだ大日本帝国軍のごとく、デジタルに対抗するためにアナログを極め、国会図書館にまで行った今回。28年前の競馬〇ックやギャ●ップなんて必死で読んでいるやつが、現代日本にどれほどいるのだろう。。。
そんな狂気じみた調査をしながら気づいたのは、フサイチコンコルドの現役生活を描く場合、界隈で話題の「SS四天王」概念を重んじすぎると視野が希薄化してしまう一方、ワルツオブシャ・・・ダンスインザダークとの宿命的なライバル関係を軸に据えると、美しい物語となるのではないかということでした。
皐月賞→両方回避。
プリンシパルS→フサイチコンコルドが急遽回避したメンバーの中でダンスインザダーク圧勝。
日本ダービー→ダンスインザダーク確勝と思ったところで、前走の回避で有力馬の死角に潜り込んだフサイチコンコルド勝利。
菊花賞→今度こそフサイチコンコルドを見失わなかったダンスインザダークが、ダービーのほぼ逆展開で満願勝利。
その後→2頭とも菊花賞を最後にターフを去る
…書いてみて、確かに間違ってはいなかったのですが、冷静に考えてみると、これ、主人公はダンスインザダークでフサイチコンコルドはライバルなのでは・・・?
競馬の歴史の深淵にかかわる疑問として、フサイチコンコルドの逸話として「逆体温」という特異体質は多くの文献で触れられているのですが、いつ関係者がそれに気づいたのかについては、はっきりした記述がないものばかりなのは気にかかりました。藤田騎手の著書では、小林厩舎すら日本ダービー時点でまだ気づいていないと解釈できる記述もあり。フサイチコンコルドの微熱って、逆体温ゆえに朝の体温が高く出たこともあったのでは…?なんて妄想も捗る、歴史の旅でした。
また、当時の資料を読み直していて思ったのが、関口オーナーはフサイチコンコルドの時点では割と大人しい・・・ということで、列伝が喜ぶ魅力的なエピソードは、リアルタイム段階ではそこまで出てきていなかったのが意外でした。後の(と言っても数年後)のド派手な言動とイメージが混ざっていることを思い知らされます。とはいえ、別に客観的事実との齟齬とか、関係者間の証言の矛盾とかに満ちているとかの「盛った話」の特徴がたくさんあるわけでもありません。実業家としての評価は別として、馬主としては、ショーマンシップに溢れ、ひたすら馬と競馬が好きだったんだろうな…と思った次第。