サニーブライアン列伝・編集後記
常に客観的な視点を心がけて執筆するサラブレッド列伝ですが、サニーブライアンの皐月賞・日本ダービーについては、若干思い入れ過多かもしれません。
例えば、
ところが、皐月賞馬であるはずのサニーブライアンは、未勝利馬からも「格下」とみなされて馬鹿にされたのである。この話を聞いて、失笑しながらサニーブライアンの印を削ったファンも、少なくなかった。
…そんな理由で印を削ったファンなんて、実在するのでしょうか。実在するとして、それは誰が証明するのでしょうか。はい、実在します。なぜならそれは、私だからです。サニーブライアン、皐月賞も日本ダービーも、清々しいまでに無印でした。スポーツ紙等から伝わってくる大西直宏、漢の一世一代の大芝居を、ニヤニヤしながら生温かく見つめていた愚か者が私です。すべては彼の掌の上で踊らされていたなんて、夢にも思わぬままに。完璧にしてやられた相手に対して沸き起こる感情は、憎しみよりも尊敬なのです。大西騎手の大芝居は、後にサイレンススズカ列伝、シルクジャスティス列伝、そしてメジロブライト列伝でも触れる形となり、友人から「大西を手を変え品を変え称えるHP」と評されたのも、理由のないことではありません。
なぜ大西騎手の策が、ここまで私の心を虜にしたのかというと、やはりそれが単なる競馬場での策ではなく、競馬場の外、それも競馬サークルという閉鎖的な人間関係の中で、「大西直宏」に対する評価の低さを逆手に取ったという側面だと思います。こんな策略、長らく競馬ファンをやっていたけれど、他には見ません。人間関係が希薄になっていく今後の競馬界では、なおさら起こりえないものです。そんな彼を、競馬の神様も後押ししていたとしか思えません。大半はもともと文章に書き込んではいましたが、最近になって知ったエピソードとして、日本ダービーでサニーブライアンが単騎逃げに持ち込んだ時、これを潰しにいける騎手が、本当はいたのです。ジョッキールームでレースを見ながら、
「なんでゆうゆう逃げてる皐月賞馬を誰も潰しにいかないんだ!?」
みたいな感じで怒り狂っていたのが、シルクライトニングで直前に発走除外を食らった安田富男騎手だったなんて、もう震えるしかありません。
サニーブライアンのクラシック戦線は、「ウマ娘 プリティーダービー」でもぜひトップクラスで取り上げてほしいエピソードなのですが、悲しいかな97年皐月賞の主力組は、サニーブライアン自身はもちろんのこと、サイレンススズカ以外のほとんどがウマ娘化すらされていません。多くは馬主の許可が取れないのではないかと思われるのですが、メジロ軍団が多数出演しているはずのメジロブライトまで出てこないのは、残念の極みです。