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「きさらぎ賞の前日に」

今週末はきさらぎ賞ですが、きさらぎ賞が迫るたびに思い出すのが、retsuden.com草創期の混迷を物語る「きさらぎ賞の前日に事件」です。

おそらく1998年7月29日、retsuden.comは、今は亡き競馬ポータルサイト「milkyhorse.com」の中の読み物コーナー「サラブレッド列伝」として始まりました。その前年、なぜか常に金欠状態で、後に「milkyhorse.com」の管理人となる「ぴんしゃん」氏から

「生活費が足りないので馬券で稼ぎたい」

と競馬指南の申し入れを受け、主に97年クラシック戦線を主たる舞台として彼に道を示した結果、彼はどっぷりと競馬沼にハマってしまい、やがて約1年後に「milkyhorse.com」立ち上げに至り、その中に「サラブレッド列伝」も紛れ込んだのです。

しかし、当初の掲載体制は、私が書いた文書データをぴんしゃん氏に渡し、ぴんしゃん氏がHPにアップするという形だったため、記念すべき第1話「プレクラスニー列伝~勝者の屈辱~」の掲載後、ひと悶着が起こりました。私が送付した文章の締めが勝手に変わっていて、小見出しも『きさらぎ賞の前日に』という私がつけた覚えがないものが付け加えられていたのです。

犯人は、もちろんup主のぴんしゃん氏です。文章改変の理由は、勝手に競馬のトリコになったぴんしゃん氏がきさらぎ賞の前日に、きさらぎ賞の馬券を買いに出かけたウインズで、プレクラスニーの訃報を知って運命を感じたから・・・というふざけたものでした。いやいや、そんな個人的な事情を、勝手に馬の歴史に付け加えられても困るではないか。っていうか、プレクラスニーの所属は美浦だし、出走したのも東京、中山、福島だけだし、ついでにぴんしゃん氏が馬券を買いに行ったウインズも都内だし、きさらぎ賞は本当にどこにも出てくる余地がない。

「すぐ原稿通りに直したまえ」

「いやだ」

・・・明らかに理は私にあるのですが、当時のup体制ではぴんしゃん氏が手を下さない限り私には何もできないため、埒があきません。結局、この小見出しが消えたのは、「retsuden.com」が独立を果たし、原稿のupも私自身ができる体制になった後のことでした。やはり、他人に生殺与奪の権を委ねてはいけなません。

このように、あるべき姿を取り戻すまでに長い時間を必要としたとはいえ、最終的に勝利を収めた私ですが、98年クラシック戦線できさらぎ賞・・・といえば、その時点でピンとくる人は珍しくないでしょう。そう、この日馬券を当てたのかどうかは知りませんが、ぴんしゃん氏はそのレースを見て

「すごい馬が現れた!今年の三冠はこの馬で決まった!」

と勝ち馬スペシャルウィークを推しまくるようになり、この年は徹頭徹尾ウンス推しだった私との間で、たびたび衝突することになります。

あれからもう25年が経つと思うと、感慨深いとしか言いようがありません。当時の私たちにとっての25年前の馬である73年クラシック世代がハイセイコー、タケホープであり、「大昔の馬」という認識だったことを考えると、それと同じくらい古い存在であるはずのスペ、ウンスらを現代のファンにこれだけ近いものとしてよみがえらせているウマ娘の文化的意義は、誠にたいしたものです。

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