1984年牝馬三冠勝ち馬列伝・編集後記
基本的にサラブレッド1頭ごとに1つの伝を立てるのが原則となっているサラブレッド列伝ですが、中には元ネタ「史記」の「刺客列伝」のように、一定のテーマでまとめられる複数のサラブレッドで1つの伝を立てているものもあり、その中でも「牝馬三冠勝ち馬列伝」は割とシリーズ化しています。
ただ、すべての牝馬を「〇年牝馬三冠勝ち馬列伝」にしているわけでもありません。私の中のルールで、「牝馬三冠の勝ち馬がすべてバラバラであり、かつ3頭とも、牝馬三冠以外のGlを勝っていない」年については、「〇年牝馬三冠勝ち馬列伝」でまとめているのです。
ただ、「牝馬三冠勝ち馬列伝」形式なら、3頭分が1つの伝で済むのでラッキー…というわけではなく、この形式はこの形式で、1頭1伝方式にはない様々な苦労を抱え込むことになります。
・文章化するにあたり、3頭共通のテーマを発見しなければならない。
・桜花賞馬が桜花賞を制するまでは普通の列伝と同様の描き方でよいが、桜花賞が終わった後は、「桜花賞馬の桜花賞以降」と「オークス馬のオークスまで」(+年度によってはエリ女or秋華賞馬のオークスまで)が混在し、オークスが終わった後は「 エリ女or秋華賞馬のオークス以降」と 「桜花賞馬のオークス以降」と「オークス馬のオークス以降」という3本の物語のラインが発生してしまう。
・エリ女or秋華賞が終わった後、前記の3本のラインはそのままなのに、3頭が「牝馬三冠戦線」から解放される結果、完全に統一性を失ってしまう
…結構これをまとめるのは苦労がいるのです。
その意味で、1984年牝馬三冠勝ち馬列伝は、よくもまあこんなに日本古来、かつドラマチックな牝系出身の馬たちがまとまってくれたことに、感謝しないわけにはいきません。ワカクモ一族のダイアナソロン、ヒサトモの子孫のトウカイローマン、そしてサラ系バウアーストックの子孫のキョウワサンダー…。
けれども、今回の調査の中で、そのうちバウアーストック系は、完全に断絶したであろうことも判明してしまいました。キョウワサンダー以前にもキタノオー(菊花賞、天皇賞・春)、キタノオーザ(菊花賞)、アイテイオー(オークス)、ヒカリデユール(有馬記念)ら数々の名馬を輩出した名門が、netkeiba.comの血統表では採用される程度に信憑性のある出自(もちろんサラブレッド)と特定され、さらにサラブレッドとの連続交配8代によってサラブレッドと正式認定される道が拓けたはずの8代子孫で断絶したというのは、皮肉と言うにはあまりにも残酷な結末です。
昭和は遠くなりにけり。。。